カンヌ広告賞:受賞作解説(4)

(別ブログ、『広告と広告業界ニュース』と同じ内容のものの掲載になりますが、ご了承くださいませ!)
 
 
 
カンヌ広告フェスティバル、フィルム(テレビCM)部門の金賞入賞作の解説の最後、4回目です。
実際の作品は、期間限定(これから1-2週間程度?)ですが、カンヌのサイトで見ることができます。
http://www.canneslions.com/winners/film/win_2_3.htm

リストは、作品名(仮のものもあり):クライアント(国)、商品名、広告会社の順。

リストの後の星は私の勝手な評価(好き嫌い?)です。★ひとつ1点、☆ひとつ0.5点。
★5個で満点(「やられた!」)、★4つは「すごい!」、★3つは「なかなか。」、★2つは「これで受賞作?」、★1つは「おかしいんじゃない?」。

14) 『Hello Tomorrow』: Adidas (US), Corporate, TBWA/Chiat/Day (US) ★★★
 →これも審査員の間で評価が高かったアディダスのCM。日本でもオンエアされてますので、見た方も多いと思いますが、バスケットボール選手が、自分の夢の中でいろいろなところをアディダスのシューズをはいて走っていく、という幻想的なCM。監督はSpike Jonze。
 ※きれいな映像だとは思うんですが、私は個人的にどうしてこれがそこまで高く評価されるのかがいまいちわからないんです。スポーツの世界に夢、という珍しいモチーフを持ち込んだからか?

15) 『Vibrators』: Aides (France), Aids Awareness, TBWA (Paris) ★★☆
 →フランスのエイズ啓蒙のCM。CGで描かれた女の子が、小さいころは誰も遊んでくれなかったのに体つきが女っぽくなると男性がいっぱい言い寄ってきて、恋におちて、ダメになって、また恋におちて・・・でもいつもちゃんとコンドームは用意している。最後のスーパーは、「正しい人を見つけられるのに十分なだけ、長く生きよう」。
 ※その場の勢いでコンドームをつけずにしてしまうとエイズにかかる可能性が高く、長生きできない=いい人を見つけられないよ、ということなのでしょうが、ちょっと冗長すぎ。

16) 『Save Energy』*: Energy Policy & Planning Office (Thailand), Energy Conservation, Saatchi & Saatchi (Bangkok) ★★★☆
 →タイの省エネ啓蒙のためのCM。”Lost Money”, “Mouse Trap”, “Madam”の3バージョン。車を無駄に空ぶかししたり、必要以上のスピードを出したり、必要ではない重い荷物をいつも載せていたりすると、その分ガソリンの無駄遣いになり、環境対応のために国も不必要のお金を使うことになっているのだ、ということをTシャツを着たフツーのおじさんがそれぞれの人に訴えるんですが、そのやり方は・・・
 ※さすがタイ、こういうことにおいても爆笑を忘れません。最後のポーズとかも笑えるし。特にマダム篇は大爆笑。でも、これじゃあ政府の真剣さは伝わらないんじゃないかな?(実際、タイの省エネ運動はいまいちのようで、タクシン首相が激怒しているとか)

17) 『Magic』: Ponle Corazen (Peru), “Mothers of the Heart” Campaign, Leo Burnett (Lima) ★★★★☆
 →ペルーのガンの子供達を救う団体(かな?)のCM。モノクロの画面に、多くの観客を前にマジックを披露する大道芸人の演技で始まる。観客の喝采を浴び、お金を集めていると、ガンのために髪がなくなってしまった男の子と目があってしまう。その子を真ん中に連れてきて、魔法の帽子をかぶせて、それを取ると・・・
 ※ガン治療の副作用で髪がなくなってしまう、ということが小さい子供たちにとってどれだけつらいことなのか、というのをこういう形で描きあげるのはお見事。確かに、こういうことは単なる気休めにしか過ぎないのかもしれないけど、彼らにとってはその「気休め」だけでも大切なことなのかもしれない、と思わずグッときてしまいました。南米のCMはさりげなく心に刺さってくるものがあって、素晴らしい!

18) 『Ventriloquist』: NSPCC (UK), Child Protection Charity, Saatchi & Saatchi (London) ★★★★☆
 →イギリスの子供虐待に対抗する団体のCM。学校の教室のシーンから始まる。椅子に座っているのは、そのクラスくらいの年恰好の女の子の腹話術人形と、それを操る不気味な雰囲気の男性。「9X8の答えはわかる?」と先生に聞かれても、校庭で友達に「うちに遊びに来ない?」と言われても、家でお母さんから「ご飯あんまり食べないけどどうかしたの?」と聞かれても、その人形は戸惑う表情を見せながらも、(腹話術師の声で)「わかりません」「家には行けないの」「大丈夫よ」といった答えしかしない。腹話術師は常に彼女の横にいて、何事か彼女にささやいたり、彼女の視線や表情をじっと見ている。最後のスーパーは「虐待されている子供は、自分からはそのことを言えない」。
 ※ショックでした。確かに、虐待を受けている子供は、親を恐れて自分からそのことを他の人にはなかなか言えない(&信じてもらえると思っていない)、という事実は理解していたものの、こういう腹話術、という形でそれを訴求されると、その深刻さをあらためて考えさせられました。腹話術師(=父親)役の男性の不気味さと効果音楽も、この作品の雰囲気を見事に作り上げています。

次回からは、銀賞・銅賞の中からのピックアップを掲載していきます。

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